groovers choice

ひめキュンフルーツ缶 Interview 2016.09.07

ひめキュンフルーツ缶

  “第2章”のスタートとなるシングルは怒髪天が担当!  
 

  ひめキュンフルーツ缶
『伊予魂乙女節』

●増子直純(怒髪天)コメント
確かに生きづらい時代だ。だからこそ、此処に生まれ此処に生きる決意と喜びの唄を声高らかに響かせるのだ!
伊予の乙女の魂よ濁りきったこの世界の闇を切り裂いてくれ!

 

 

断言しよう。今、日本の音楽シーンで最も面白いのは“楽曲派アイドル”である。

楽曲派アイドル。“アイドル”という衣を纏いながらも、その実態は実に多種多様だ。コンセプト、アティテュード、パフォーマンス、言動や立ち居振る舞い、そして楽曲。さながらアイドル界が解放区になったかのごとく、従来のアイドル的概念から逸脱する表現が次々と産み落とされ、せめぎ合っているのだ。

とりわけ楽曲。いわゆる“アイドルソング”というフォーマットに閉じ込められた硬直化した表現とは一線を画し、先鋭クリエイターたちが自由闊達な筆致と解放感に充ちた色彩感でその創造性を存分に発揮している。あたかも、新たな創作の場を得たことで嬉々とする前衛芸術家のごとく。あるいは、"アイドル"という磁場に足を踏み入れることで予期せぬ化学反応を期待する実験者のごとく。はたまた、果たせなかった夢を“我が娘”に託そうとする親のごとく。

クリエイターたちと対峙するアイドルたちも、多種多様だ。与えられた楽曲を健気に表現しようとする者。それらに独自の解釈を施そうとする者。果敢に制作陣への参画を試みる者。あるいは、自らが触媒となりクリエイターたちから新たな創造性を引き出す者。こうした「クリエイター VS アイドル」の丁々発止が実に面白く、そこから生まれるものも実に刺激的なのだ。

そこで、ひめキュンフルーツ缶である。その"可愛い過ぎる"グループ名ゆえに、辿り着くまでに少々時間を要してしまったが、まあ、こうして幸福な出会いが訪れたのだから良しとしよう。

まるで何かを急き立てるかのようなバスドラの連打。まさに乱れ打ちとでも言うべきタムのロール。ブンブンと唸りを上げながらドライヴするベース。切れ味鋭いナイフのごときギターリフ。そして、多様なニュアンスを伴って舞い踊るギターソロ。もはやアイドルのやるロックではなく、ハードコア・バンドのそれだ。そして、随所にエレクトロの要素もちりばめられ、エレクトロコアの様相を呈することもしばしばある。

驚くべきは、そんな本格的なバンド・サウンドの上で鳴り響く彼女たちの歌声であり、疾走感に充ちたサウンドをさらに煽るような彼女たちの激しいパフォーマンスである。決してハードコア・サウンドに"寄せて”がなり立てるのではなく、女性の可憐さや純真さを残しつつ、内に秘めた強い意志や揺るぎない信念を歌声から滲ませることによってソリッドな響きをものにし、また、類型的な“ロック”のアクションに終始するのではなく、統制のとれたフォーメーション・ダンスや感性に任せた自由度の高いムーヴ、そして、女性らしさを漂わせるしなやかな舞い、さらには時に“祭り”を思わせるような男性的な踊りを織り交ぜながら、彼女たちならではのビートを紡ぎ出すことで、ハードなバンド・サウンドと対峙させているのだ。そして、その歌声やパフォーマンスはそんな重量級サウンドに決して負けておらず、むしろ、そこで繰り広げられる一進一退の攻防が「ひめキュン・サウンド」の特徴的な色彩となっている印象だ。

そして、もう一つ忘れてはならないのは、彼女たちが醸し出す「泥臭さ」である。愛媛という土地で生まれ育った彼女たちの生得的な属性なのか、それとも、紆余曲折を経たことで蓄積された機微なのか。時に洗練された、時にカッティングエッジな、時に様式美的な語法で綴られるサウンドの隙間からちらりと垣間見られるそれは、作為的に打ち出された“キャラ”では決してなく、その人物像や生き様からそこはかとなく滲み出ているものだ。そしてそれは、ひめキュンの鳴らすロックに大きな説得力をもたらしている。

今年の8月末に6周年を迎えたひめキュン。デビュー当初こそアイドル然としたイメージを打ち出していたが、6枚目のシングル「例えばのモンスター」辺りからは本格的なロック・サウンドへとシフトしていったので、本格派ロックを標榜するアイドルとしては先駆者的存在の一つとして数えられるだろう。「疾走感」や「重厚なロック・サウンド」という点では、アイドル界随一と言ってもいいかもしれない。そんな彼女たちは、さらなる進化を目論み、今年初めより「第2章」と称する新展開を標榜している。それを“公言”したのは今年1月に地元愛媛の「ひめぎんホール」サブホールでの公演時。2月にはアルバム『天国ギミック』をリリースし、そしていよいよ「第2章」初のシングルリリースである。

「伊予娘乙女魂」と題されたこの新曲。地元愛媛色や独特の泥臭さがいつになく打ち出されている。そういう意味では、彼女たちのレパートリーの中では異質な部類に入るものだ。ロックというカテゴリーの中では、これまでの作品と地続きではあるが、その質感は随分と違った印象を受ける。それに戸惑うファンもいるかもしれないが、同時に、ひめキュン・サウンドの可能性を大きく広げる、極めて重要な“一打”となりうる作品である。

この6年間のこと、そして第2章における初シングル「伊予娘乙女魂」について、谷尾桜子と菊原結里亜に語ってもらった。

谷尾 桜子(さく)

谷尾 桜子(さく)

菊原結里亜(ゆん)

菊原結里亜(ゆん)

―― まずは、お二人から「ひめキャンフルーツ缶とはどういうグループなのか」をご紹介いただきたいのですが…。

谷尾桜子(以下:さく) : はい。2010年に結成されたグループなんですが、愛媛に住んでいる子たちを対象にオーディションでメンバーを選びました。メンバー8人でスタートして今は5人になっています。事務所がジャパリネットというバンドを育てていたところで、基盤がロックなので、私たちの音楽も激しいロック系が多いんですが、ライブもそれに合わせて疾走感に満ちていて、勢いのあるライブを売りにしています。

 

で、ちょうど6周年を迎えたばかりなんですが、去年の5周年を迎えたあたりから、疾走感や勢いだけじゃなく、もっといろんなことを“魅せる”だったり、お客さんをもっと引き込む力だったり、を付けていこうと今頑張っているところです(笑)。

菊原結里亜(以下:ゆん) : その“魅せる”っていうのを本格的に意識し始めたのが、今年の1月に地元愛媛県の「ひめぎんホール」のサブホールでやった時からなんです。デビュー当初から「3,000人収容のメインホール完売」というのを目標にしてきたんですが、まずのその第一歩ということで、1,000人収容のサブホールをソールドアウトにして、そこから本格的に次のステップ、「第2章」を掲げて、今まで半年間ツアーなどをやってきました。

―― 実は僕、今“楽曲派アイドル”というものにめちゃくちゃハマっておりまして、そういうのをたくさん“掘って”るんですけど、ようやく「ひめキュンフルーツ缶」に辿り着きました!

さく : おっ!(笑)

ゆん : ありがとうございます!

―― で、取材するにあたって、これまでの作品をダァーッと聴かせていただいたんですが…カッコイイっすね!

さく& ゆん : ありがとうございますっ!!!

さく : どれが好きでした???

―― 好きな曲いっぱいあったんですが、ひとつ選ぶとしたら「例えばのモンスター」! あれ、いい曲ですね~。

さく : あぁ、なるほど~。

ゆん : そこから曲調が変わっていったんですよね…。

―― あっ、後ほどそこを訊こうとしていたんですが、やはりあそこから変わりましたよね!

ゆん : そこから曲調が変わっていったんですよね…。

さく : それまでは、頑張ってアイドルに“寄せて”たんですけど…

ゆん : 制服とか着て!

さく : 歌詞とかも、可愛らしい恋愛のことだったり、キーも…。キーはずっと高いか…(笑)

ゆん : キーはずっと高いね(笑)。

さく : でも、「例えばのモンスター」ぐらいから、「もういいじゃん!」って感じで、社長も「俺の得意なジャンルでいこう!」みたいな(笑)

―― 初期のものからひと通り聴かせていただいたんですが、デビュー曲の「恋愛エネルギー保存の法則」なんて、それこそAKB48を思わせるものがありましたよね。曲調といい衣装といい…。

さく : あぁ、体育館でMVも撮りましたし…。

ゆん : イメージもそんな感じ作ってたんで…。

―― ですよね。で、ロックを基調にしている部分はあるんですが、やはり「アイドルのロック」って感じでした。

ゆん : そんな感じでしたね。

―― で、そこから「例えばのモンスター」で「変わった」とおっしゃいましたが、その辺りをもう少し詳しくお聞かせください。社長も「じゃあ、もうロックで行こうか!」みたいな感じだったんですか?

さく : はい。ちょうどその時に、8人から5人になったんですね。2年目だったけ???

ゆん : うん。

さく : それぐらいの時期に、「自分らしく」というか「自分たちの強みを生かしていこう」って感じになって、T-シャツとかのデザインも、アイドルの方だと可愛らしい感じですけど、私たちはドクロみたいなのをモチーフにしたりとか…。

ゆん : 超グロテスクな(笑)。

―― ちょっとアメリカンコミック的な感じのですよね?

さく : そうそう。まあ、メンバーが減ったのがきっかけもあって、「変わろう」「一新しよう」と。

―― なるほど。で、ちょっと“歴史”を調べさせていただいたんですが、シングル「恋愛エネルギー保存の法則」でデビューされ、オリコン・インディーチャート1位を獲得されました。で、その後は「伸び悩む状況が続いた」という記述をどこかで目にしたのですが…。伸び悩んでいたんですか???

ゆん : その頃は…う~ん…どうだろう?。

さく : 1stがちょっと売れすぎちゃったのかなぁ…(笑)。

ゆん : 「売れすぎた」って(笑)

さく : わかんない!(笑)

ゆん : 時期的にもいろいろと重なって…。デビューっていうのもあったと思うんですけど、最初に1位を獲っちゃったから、その後が「あぁ」って思ったのかもしれないですけど…。

さく : やってる最中は「なんか伸び悩んでるな~」とは思ってはいないんですけどね。ただひたすらに、がむしゃらに毎日いろんなイベントとかスケジュールをこなしていたので。本当毎日生きるのに必死だったというか…。

ゆん : 初期は数字を気にするとか、そういう大人の考えはなかったですね。みんな学生だったし。私も中学生だったので。

―― 自分で「伸び悩んでるなぁ」とかは思わなかったんですね(笑)。

さく : “大人”の方々は感じてたのかもしれないですけどね。

―― お二人は最初は「ひなキュン」にいらしゃったんですよね?

さく& ゆん : うぁ~!(笑)そうです!

さく : 二人は「ひなキュン」でした。

ゆん : そこまで詳しく調べてくださって!

―― そこから途中で「昇格」と言っていいんでしょうか?「ひめキュン」へと移るんですよね?

ゆん : そうです!

―― 最初に「ひなキュン」に入られた時は、ああいう“AKB48みたいな”アイドルになりたい、と思われていたんですか?

ゆん : それはメンバーそれぞれ違っていましたね。

さく : 私は、3歳から16歳まで新体操を習っていたんですね。その時に「表現」することがすごい好きだなぁというのをずっと感じていたんです。で、その頃、モーニング娘。さんが高橋愛さんをリーダーに“プラチナ期”という時期を迎えていて…。分かりますか?

―― もちろん!あの頃いいですよね~。一番好きな時期です!

さく : おぉ(笑)。幼い頃はアイドルに憧れていた普通の女の子でしたけど、その頃になるとアイドルに憧れはなくなってましたが、高橋愛さんのいるモーニング娘。を見て、「あ、アイドルにこんなにカッコいいグループもいるんだ!」って思って…。しかも表現力がすごいんですよ、高橋愛さんは。

―― はい。知ってます!

ゆん : ハハハ(笑)

さく : (笑)....それを見て「こういう風になりたい!」と思って、応募しました。

ゆん : さくは凄かったんですよ~。後からみんなの一次審査の書類を見たりしたんですけど、さく一人だけ…えーっと?アイドル像?

さく : あ~、そうそう。

ゆん : 「私の思うアイドル」みたいなものを履歴書と別の紙にびっしり書いていて!

さく : 18歳からの応募だったので、ちょっと“頭脳”を使おうかなと(笑)。ちょっと「考えてるよ」みたいなアピールを(笑)。

―― アハハハ(笑)。ゆんさんは?

ゆん : 私は、芸能界そのものには興味があったんですが、「歌って踊って」ということにはそれほど興味がなかったんですね。姉が地元でモデル活動をしていたので、どちらかというとモデルになりたいなと最初は思っていて。で、東京のオーディションとかも受けていたりしたんですよ。でも、一次審査通っても二次審査は東京まで行かなきゃいけないので、そこで親に止められることが多くて…。そんな時期にひめキュンのオーディションがあって、「愛媛で活動できるし、東京に行くチャンスもあるよ」ということだったので、あ、もうここしかないかな、と思って受けました。特別「アイドルになりたい!」って感じではなかったです。

―― そういうお二が入ったひめキュンは、インディーチャートでNo.1を獲って、その後「伸び悩ん」で、その後に「例えばのモンスター」で新しいサウンドを打ち出すわけです。そこで「好きなようにやってみよう」というテーマを掲げたわけですが、まあ言ってしまえば「大人の好きなようにやってみよう」ということじゃないですか。

さく& ゆん : そうですね。

―― お二人が目指していたものとはだいぶ違うものではないか、とも思うんですが…。

さく : いえ。そんなことないですよ。私はどちらかというと“アイドルアイドルした”ものが苦手というか…。声も可愛くないし、振りとかも可愛らしい振りよりもカッコいい振りの方が得意だったり…。もともとそっち寄りだったんで、「あ、私にとっていい形になって来たな」と思いましたね!(笑)

ゆん : そうなんや!(笑)

―― あ、先ほど「寄せてた」みたいな発言もありましたが、それは事務所的にというだけではなく、ご自身としても「アイドルに寄せていた」という感覚はあったんですね?

さく : そうですね。曲の雰囲気は壊しちゃいけないので、「可愛くしなきゃ」とか「可愛く歌わなきゃ」とか思ってましたし、レコーディングでも「もっと可愛く歌って」って言われ、声を作って、なんかもう“喉声”みたいな感じで(笑)歌ってたんですけど、「例えばのモンスター」とかなら思い切り歌えるし、自分の気持ちいいように歌えたり、ダンスとかも思い切りハジけられるので、そこからライヴも変わっていって、メンバーの意識とかも変わったんです。

―― その頃って、ご自身で聴いていた音楽とか、好きだった音楽って、そういうロック系だったんですか?

さく : 私、ロックはそんなに…。あ、クイーンとかは聴いていました。

―― えぇぇえええ!クイーンですか!?

さく : 好きでした!洋楽だとクイーンとか、ビリー・ジョエルとか、アース・ウィンド&ファイアーとか…。

―― 僕の大好きなのばっかりですよ!

さく : あ、ホントですか? あと、女性アーティストだと、ブリトニー・スピアーズとかビヨンセとか聴いてたり…。

―― その歳でクイーン…。え?え?本当はお幾つですか???

ゆん : アハハハ!(笑)

さく : (笑)24歳です!

―― まあ、ご両親からの影響みたいな感じですよね?

さく : いえ、CMとかで「この曲いいな」って思った時に、クレジットを見て、そこからネットとかで調べて聴いてみる、って感じですね。

―― へ~、ご自分でそういった音楽にビビッと来たんですね。

さく : そうなんですよ~。

―― まあ、「ひめキュン」がやっているロックは、そういったものとはまた少し違ったものではありますが、さくさん的にはすんなりと受け入れられた、と。

さく : はい。すんなりでした。

ゆん : 私はちょっと対照的ですが、もともとそんなに音楽は聴いてなかったので、“アイドル”をしている時もそれほど「アイドルしてる」って感覚もないし、「例えばのモンスター」で“ロック”になった時も、「あ、サウンドが変わったから、それに合わせて変わらなきゃ」といった意識はなく、「あ、こうなったんだ。はい」みたいな感じでしたね(笑)。

―― ハハハ(笑)。

ゆん : 何も考えていなかったので、違和感もなければ、特別意識してたというわけでもなく、でした。素直に「来たものをやる」って感じで。

―― 性格的にそんな感じですか?

ゆん : う~ん。

さく : まだ子供だったというのもあるんじゃないですかね。そこまで考えてなかったというか…。

ゆん : 私たちは5歳差があるので(笑)。

さく : だって、今のゆんが、「やっぱ路線変えて、可愛いのでいくよ!」とか言われたら、ねぇ…(笑)

ゆん : そうそうそう!さすがに「無理です」って言うと思いますね。でも、あの当時はそういうのも無かったですし、まあ、やってて楽しかったので、「楽しいことできてる、わーい!」ぐらいの気持ちでした。

―― 無邪気な感じだったんですね。

ゆん : (笑)無邪気でした。

―― でも、それからサウンドはさらにさらに激しくなっていくじゃないですか。そういうのも違和感なく…?

ゆん : それはもう全然。むしろ、なんかちょっと可愛い曲が来たら、「あ、可愛いな」って“違和感”を覚えるぐらいになってきましたね。

―― ひとつの想像として、ああいったビートの激しいロックをやってると、「いや、わたしはこういうんじゃなくて、“アイドル”に戻りたい!」っていうメンバーもいるのかな、なんて思ったりもしたんですが…。

ゆん : “アイドル”に戻りたい、っていうのは無いですね。

さく : 無いですね。まあ、声質的にアイドル系の可愛い曲のほうが合うメンバーもいるんですが、全体的には今のが好きだし、今の形が「ひめキュン」って感じなので、はい。

 

 

どんどんサウンドがハードになっていって、今では上がってくる曲も「前作よりどれぐらい速いか?」みたいな感じになっているんですよ。あ、作る側もそれを意識してます(笑)。(ゆん)

―― 先ほど「6周年」とおっしゃいましたが……まあ、本当は10時間ぐらいお話を訊いて本でも書きたいぐらいですが(笑)、時間も限られていますので、えーっと、6年。簡単に振り返っていかがですか?(笑)

ゆん : うぁ~(笑)。

さく : う~ん…。6年か… 。難しいね。

ゆん : そうだね。えっと、いっぱい節目はあるんですけど、さっきも言ったようにメンバーが8人から5人になった、っていうのと、次はもうメジャーデビュ-…まで飛ぶ???

さく : うん。

ゆん : (笑)次は徳間ジャパンからメジャーデビューしたのが3周年の時だったので、そこからまた、例えば、インディーズ時代は取材とかTVとか全く無かったんですけど、そこからダァーって増えて、何も分からないままだったんですが…。例えばインディーズの時は、曲のことを訊かれても答えられなかったんですよね。でも、メジャーデビュー後は、より自分たちの立ち位置を考え、「曲を伝える者としてこうあるべきだ」といったことを意識するようになりましたね。

―― だんだん「無邪気」から「意識の高い」アーティストになっていったわけですね!

ゆん : そうですね!(笑)この曲はどういう思いで作られていて、自分たちはどうやって受け取って、どういう風に表現したいか、というのを、だんだんですけど「あ、こうしなきゃいけないな」というのが分かってきたし、どんどんサウンドがハードになっていって、今では上がってくる曲も「前作よりどれぐらい速いか?」みたいな感じになっているんですよ。あ、作る側もそれを意識してます(笑)。メジャーデビューしてからは、さらに疾走感が増していきましたね。

―― それが今や「ひめキュン・サウンド」って感じですもんね。

ゆん : ギターがギュンギュン鳴っていて。

―― そうですよね!ギター、カッコいいですよね! 僕もギター弾くんですけど、めっちゃカッコいいです。とても凄いことしてるんですよ!

さく : 伝えておきますね(笑)。

―― では、さくさんはどうですか?

さく : はい。あ、何年までいったっけ?(笑)

ゆん : メジャーデビューまでいった(笑)。

さく : メジャーデビューしてからは「ライヴの勢い」とか「ダンス」だけじゃなくて、「歌」にもより一層力を入れるよう努力しました。表現力をつけて「歌」も大きな武器となるように。より難しくなりましたが、難しいけどその分幅も広がるというか、伝えられる可能性も広がっていったな、と。最初はダンスも激しかったから、息を整えるだけで必死でしたけど、だんだん慣れてきて、ツアーもたくさんやって、経験を積むことで、表現力も前よりは付いてきたように思います。でも、まだまだですね…。「歌」というのは一番の課題です。社長にもよく言われるんですけど、「上手く歌う必要はないから、どれだけ聴いている人に伝わるかを大事にしろ」と。なので、今「永遠の課題」に取り組んでいるところというか、そのステップまでは来たので、そこからはもうどんどん上に行くだけだ!と思っています。

―― 一番最初に「表現をする」ことがお好きだとおっしゃっていましたが、それが“本格的”にできるようになったわけですよね?

さく : そうなんですよ。それらが揃って初めて“資格がある”と思っていたので、やっと“同じ舞台”に立てたかなと思いましたね。「ここからが勝負だな」と。

―― 若干戻りますが、途中メンバーが減りましたよね。で、その時には「解散も考えた」というような記述をどこかで見掛けたのですが、それは本当ですか?

さく : 本当です。むしろ、せざるを得ない状況だったというか….。だって、メインヴォーカルとリーダーと人気があったメンバーが一気に抜けることになったんで、「無理だろ」「解散じゃねぇか」って言われて…。で、そこで「いや、やります!」と。

―― ああ、“大人”の方に「解散」を促されたんですね....

さく : そうですね、社長に

ゆん : 言われました。

―― でも「やります」と。

さく : 悔しいんで「やらせてください」と。

―― それはもう迷いなく?

ゆん : 迷いなく、でしたね。

―― 解散という選択肢は考えなかったですか? 何が「続ける」と言わせたんでしょう?

さく : 私は初め、東京の大学に行こうと思っていたんですけど、オーディションに受かったから地元の大学を受けたんですね。私のヴィジョンの中では「ひめキュン」はものすごく大きいもの、というか、これからの人生で大事なポジションを占めるもの、として捉えていたので、「そんな3人辞めたぐらいで辞めねぇよ」みたいな、ちょっとそういう強気な感じでした。

―― なるほど。揺るぎない気持ちがあったんですね。ゆんさんはどうですか?

ゆん : その頃は、う~ん、ただ単にポンって辞められたのが悔しかったし、なんかそのコたちが辞めたから無くなる、っていうのも、自分の中で信じたくないというか。残ったメンバーが頑張って見返したい、自分たちが有名になって「あ、辞めなきゃよかった」って思わせたい、という気持ちが一番でした。

―― その時から、さくさんがリーダーになって鍛え上げていったわけですよね?

さく : アハハ。何情報ですか???(笑)

―― え~、まあ、ちょっと想像も入ってるんですけど(笑)。みんなで一緒になって、ということですよね。

さく : そうです。みんなで、です。私は元からそんなしっかりした方じゃなかったので、「リーダーやれ」って言われて「いやだなぁ」って気持ちもあったし、務まらないと思いました。自分は「自分の中の完璧なリーダー像」にはなれないし、絶対負担になると思ってたので、そこは敢えて「みんなで成長していこう」って最初に言いましたね。リーダーというポジションをもらったけど、誰かひとり「この人に頼ればいいじゃん」っていう人がいれば、みんなもその人を頼ってしまって育たないというか、人任せとかになっちゃうと思ったので…。だから、それも踏まえて「みんなで頑張ろうね」って言って、ちょっと逃げたんですけど(笑)。

ゆん : 逃げたん???

さく : 逃げつつ、みたいな(笑)。“逃げ”にはなるけど、最終的にはみんながいい方向に向かう事になるので…“利害の一致”というか(笑)

―― ハハハ(笑)。いや、めっちゃしっかりしてるじゃないですか!考え方が大人ですね。

さく : あ、なんか結構言われますね。

ゆん : 真面目です。隙のない感じです。

―― ちゃんと自分の中に、“設計図”がきちんと構築されていますよね。

さく : 人生プランはちゃんとありますよ。アハハ(笑)。

―― ゆんさんから見て、どういうリーダーですか?

ゆん : リーダーとしてですか?う~ん。最初は、さくに全部任せるのも違うな、と思っていましたね。それに頼りないところもあるので(笑)。決して「私について来い!」ってタイプじゃないので、そこはみんなで頑張ろう、と。でも今思うと、リーダーっていうのをちゃんと決めたのは良かったと思うし、ここ2~3年でリーダーらしくなって、まとめてくれるところはまとめてくれるし、しっかりした考えを持っているんで、さくに言われることはもっともなことだし…。甘えがなくて、ストイックなんですよ。ちゃんとしたプランを持っているし、「こうするべき」といった判断は正しいんで、「やっぱりリーダーはさくだな」って思いますね。でも、普通に生活している中では、特にしっかりしてるわけではなくて…。とりわけ行動面では(笑)。

さく : けっこう抜けてるし、マイペースなんですよ。

ゆん : マイペースで天然。そして、トロいです。行動が遅いですね!(笑)

―― へぇ~、意外です。

さく : 日常生活では決して模範的ではないんですよね…。

ゆん : いや~、ホント遅いですよ、いろいろ(笑)。「さく待ち」が多いです(笑)。

―― ああ、そうなんですか。

さく : 急ごうと思ったら、すごいストレスになってしまうんですよ。頑張って急ぐんですけどね。

―― ああ、ちょっと分かる気がします。

さく : おぉ!

ゆん : でも、急いでくれないとこっちがストレスになるんで!

―― (笑)

さく : 仕事はちゃんと急ぐように頑張ってますので(笑)。

ゆん : 最近はマシになってきました(笑)。

―― 逆に、さくさんから見てゆんさんはどうですか?

さく : ゆんは、13歳で入ったんですけど、入った時からしっかりしていて、大人びていましたね。すごい印象的だったのが...。オーディションが終わったその週に、社長も含めて全員でカラオケに行って「どれだけ歌えるかをテストする」みたいなのがあったんですね。1人ずつカラオケで歌ったんですが、1コーラスだけ歌うので、毎回1コーラス終わるたびに誰かが曲を止めないといけないんですよ。その役をゆんが毎回すかさずしていたので…

ゆん : ああ、そうなんや!全然憶えてない!(笑)

さく : すごいしっかりしてるなぁって。自ら気づいて「あ、終わったよ」みたいな感じで、すごい動けるなぁ、って思って。

ゆん : え~、そんなの初めて言われた。

さく : 私は、そういうところはボーッとしちゃって気付かないタイプだから、「この若さですごいな」とその時に思ってたんですね。で、歳の離れたお姉ちゃんがいるから、けっこう幼いながらにしっかりしてるところもあって。

―― 気配りとかそういったところですか?

さく : そうですね。で、話とかも、お姉ちゃんがいるから意外と合うんですよ。5歳差でも『らんま1/2』が好き、みたいな話をするんですよね。まあ、二人とも世代じゃないんですけど(笑)。倖田來未さんが好きだったりとか、ちょっとした共通点もあったりして、あまりジェネレーション・ギャップも感じずにいられるのはすごくいいですね。

―― 他のメンバーも含めて、皆さんいい形で噛み合っている感じなんですね?

ゆん : はい。バランスはすごくいいと思います。

 

 

「楽曲がいい」って言われると、むしろ初期の頃は自分たちがけなされているような気持ちになったんですよ。「楽曲はいいけど…」って感じに。(さく)

―― 先ほども言いましたが、僕は今“楽曲派アイドル”というものにハマり、取材もやらせていただいているんですね。で、他の“楽曲派”の方にも訊いたんですが、若干意地悪な見方をすれば、「大人たちが自分たちの趣味で好きなように楽曲を作って、可愛い子に歌わせて、自己満足をしている」という見方をする人もいるかもしれない、とも思うんです…。お二人にはそういう感覚ってありますか?

さく : ああ、「やらされてる」ってことですか?

―― まあ、簡単に言えば…。

ゆん : そんなになんか言われた、とかはないですね。とりあえず「声出せ」しか言われてないです(笑)。煽りとかも「入れなよ」と言われるぐらいで、「こういうのをこういうタイミングでこう言え」とかは無かったので、「やらされてる」というよりは自分たちが好きなようにライヴをどんどん作っていけるようになってるかな、と。

さく : 曲に関しては、社長が「これをやれ」って言われたものをやることが多いんですが、楽曲自体そう言われたものに対して「これ嫌だけど歌う」ってなったことはないんですね。それに最近だと、例えば今回の新曲も怒髪天さんに書いてもらっているんですが、すごい怒髪天さんが好きだったので嬉しかったり、だんだんいろんな方に提供してもえるようになって、曲の幅も広がってきていて、色んな曲が歌えるので…。そんな「大人たちに踊らされている」って感覚はないですね。ただ、「TEAR DROPS」という曲のレコーディングでは...。歌い出しの「それ~は弱さ~では~♪」っていう部分があるんですが、そこは最初私が歌ってたんですよ。レコーディングしてくれる人は私の歌声を使ってくれたんですけど、社長から「No」が出て。なんか「暗過ぎる」って替えられたんですよ。その時はちょっと恨みましたね!(笑)

―― ハハハ(笑)。それ書いていいですか?

さく : いいです!いいです!

ゆん : 大丈夫です!

―― でも、一方で、今のはちょっと意地悪な見方をしましたが、僕が楽曲派アイドルがすごく好きなのは、洋楽とかずっと聴いていた大人の世代が制作しているので、洋楽を聴いて育った大人の世代にもグサッと刺さるんですよね。みなさんの曲とか日常的に聴けるんですよ。

さく& ゆん : おお、ありがとうございます。

―― それは、やっぱり僕らの世代の好きだったものを再現している、という部分もあると思いますし…。また、お二人も知らなかった音楽だと思うんですが、それに触れて、味わって、歌って、という形で“良質な音楽”が受け継がれていると思うんですよね。“楽曲派アイドル”って、そういう場でもあると思うんです。バンドをやってた、あるいは、やってる方とかが、いい音楽を作ってもなかなか発表できなかったのが、今はみなさんに託して発表してるんです。今の「アイドル」という“磁場”は熱量に満ち溢れているし、「何でもアリ」の自由な表現の場でもある。そうした磁場を使って、みなさんの力を借りて、世に問うている。逆に“アイドル”側からすれば、そうした制作陣の作る良質な音楽をある意味“利用”して、優れたエンタテインメントを成立させている。なんかそういう風に捉えています。それがすごいいいなと。

さく& ゆん : おぉ!

―― 制作陣とメンバーががっちりと力を合わせて、素晴らしいものを作っているなぁ、なんて思ってるんですよね。

さく : 「楽曲がいい」っていうのは最初の頃から言われてたんですけど、それを言われると、むしろ初期の頃は自分たちがけなされているような気持ちになったんですよ。「楽曲はいいけど…」って感じに聞こえてしまっていたんですよね。それが悔しいのもあって、自分たちもパフォーマンスを磨いて、変わっていきました。今では、パフォーマンスもありきで好きになってくれているように思います。ライヴが好き、楽曲が好き、ひめキュンが好き、っていう風に…。そこは楽曲が良かったからこそ頑張れたのもあると思いますから、まさに相乗効果というか、制作側とパフォーマンスする側との役割分担がきっちりとできて、それが上手く噛み合っている感じがしましたね。曲を提供してくださる人、私たちはそれを伝える人、というように。

―― やはり、そうした一体感があるんですね。

さく : そうですね。レコーディングに際して、その曲に対してちょっとでも“甘い”とバレるんですよね。例えば、解釈し切れていないとか、自分の中でなんとなくしか理解していないとか、そういう状態で歌うとバレる。曲を作ってる方にレコーディングやミキシングもしていただいているんですね。だから、本当にそれは「1対1」という感じで向き合っています。作曲家兼レコーディングエンジニアの方とメンバーとで作り、社長が最終的にOKを出す、といった感じですね。本当にチーム感というのがあって、制作と演者がダイレクトに繋がっている感覚があるので、自分たちのできることはしっかりとやらないとな、というのはいつも思っています。

―― なんか「チーム」でもありながら、一方では「闘ってる」感もありますよね。

さく : 切磋琢磨みたいな感じですよね。いい曲を書いてもらえれば書いてもらうほど、こちらも歌いたいというか、“歌いたい欲”も上がるし。そうですね。確かに。

―― “純粋”な視点からはどうですか?(笑)

ゆん : 純粋な視点からですか!?(笑)一体感…。まあ、そうですね。他のアイドルさんだったら、いろんな方に曲書いてもらったり、作曲家の方と直接会わなかったりすることが多いと思うので、そういう意味では近いし、ずっと一緒にいる人が曲も書いてくれているので。

さく : PAもしてくれるんですよ。車も運転するし(笑)。

ゆん : 自分たちもだんだん慣れてきて、その人の曲はすごい覚えやすいですね。そういった“絆”はやはり重ねるにつれて深くなってきているな、と思います。

―― そろそろ新曲のことを訊かなきゃいけないのですが、その前に一つだけ。すごいハードコアな、そしてエレクトロも入ったエレクトロコアのようなモダンなアプローチがありながら、ちょっと僕が感じたのは、随所に「泥臭さ」みたいなのがあるな、と…

さく : 感じてもらえました!?

ゆん : フフフ(笑)

―― それがいいんですよね!ご自身でも感じます?

さく : 感じます。ひめキュンが歌うからこそ、それが出るんだろうな、とも思ってて、やっぱり愛媛という田舎で生まれて、強く逞しく育ったからこそ表現できる歌だな、と。でも、怒髪天さんから見ると「ピュア」みたいな感じで言われたよね? なんて言われたっけ…? でも、なんか「乙女節」って入っているように、ちょっと女の子のピュアな部分も入ってるのかな、とも思うんですけど。でも、やっぱり基本的に他のアイドルとかグループとかと違うところは、そのままの姿の泥臭さ。それが売りなので、そこを感じてもらえたなら嬉しいですね。

―― ゆんさんはどうですか?

ゆん : そうですね。キラキラ感では勝負していないんで、そこは他のアイドルさんとはっきり差別化できるところですね。なんかこの間もアイドルさんのイベントに出た時、ネット配信とかだと文字が流れるじゃないですか。あれ、なんて書かれてたっけ…? あ、「すごい貫禄があってカッコいいけど、全くキラキラしてないな」って書かれたんだ(笑)。まあでも、キラキラを狙っているわけじゃないので、それは正しい見方だな、と(笑)。私たちも、とりあえずいい方向に進んでるかな(笑)。

 

 

感謝の気持ちを抱きながら、「さらに強くなって戦ってくる」という意志を表した歌詞だと捉えています。(ゆん)

―― さて、新曲についてお訊きしますと、これ「第2章」のスタート、と資料に書いてあったんですが、歴史を紐解くと第2章どころか、第何章かって感じもするんですが...。

さく : ハハハ(笑)。

ゆん : ああ、確かに(笑)。

―― でも、第2章なんですか???

さく : そうですね。今までがむしゃらにやってきたってんですが、そこまでが第1章。そして、がむしゃらにやってきたことで培われたものが「ひめキュン」らしさという“基盤”となって、「ここからさらに武器を増やそう」というのが第2章。「このままじゃダメだな」と気づいた時に、「じゃあ新しいスタートを切らなきゃだめだな」となって、去年ぐらいから「第2章」を進めてますね。

―― あ、そうか...。このシングルが「第2章」というわけではなくて、去年から進めているわけですね。

さく : そうですね。去年から進めていて、さっき言った「ひめぎんホール」での1月のライヴで「第2章」が幕を開けたんですが、そこからアルバムは出たけど、シングルは出ていなかったので、ちょっと時間は経っちゃったんですけど、「第2章」が始まってからの初めてのシングルということです。

―― なるほど。で、怒髪天の増子直純さんと上原子友康さんがそれぞれ作詞・作曲されている「伊予魂乙女節」。ロック・ナンバーですが、怒髪天さん自身は「R&E=Rock & Enka(演歌)」を標榜されていて、これも演歌というか昭和歌謡みたいなニュアンスがあります。曲をもらった時はどういう印象を持たれましたか?

ゆん : まあ驚きましたね!「 これを歌うのか!」って思ったし、デモの時点ですごく完成されていたので、「これを私たちが歌って、また違う作品にできるのかな…」って不安もありました。と同時に、すごく覚えやすくて、メロディがスッと入ってきたし、歌ってて楽しかったので、違う表現ができそうだなとも思いました。

―― ロックという意味では今までのサウンドと地続きではあるのですが、ビート感とか全然違いますし、リスナーが受ける印象もだいぶ違うと思うんですけど、やってる側からしても違いますか?

ゆん : すごい違いますね。

さく : ひめキュンのメロディって複雑なものが多いというか、かなり音符が上がったり下がったりするんです。で、このぐらいのシンプルな曲というのがあまり無かったので、歌いやすさとしてはこっちの方が歌いやすいんですが...。でも、これをどう表現するかというのは難しいな、と聴いた時から思っていて、レコーディングするまでに自分なりにものすごく考えて、「こうしよう」っていうのをちゃんと固めてから臨みました。

―― なるほど。シンプルなだけにそこに色をつけるのが難しいと。

さく : この曲を生かすも殺すも歌い方次第だな、と。

―― ちょっと「巻き舌」っぽく歌っているところがあったりとか、Bメロのところで男性の声の合いの手が入ったりとか…

さく : ああ、あれ私たちなんです!(笑)

―― ええ?男性の声じゃないんですか?

さく& ゆん : アハハハ!(爆笑)

ゆん : みんなに言われるんですよ。

―― え~、てっきり男声かと。

ゆん : 一応2パターン録ったんですよ。かわいく「おい!」って言ったのと、男っぽく「おい!」って言ったのを。で、使われたのがそっちだったんです。

―― もしかしたら地元のお祭りか何かでサンプリングでもしたのかな、と思ってたんですが...。

さく : 私たち出せちゃうんです(笑)。

ゆん : ライヴでも自分たちでやってます!

―― 歌詞はまさに「伊予」「愛媛」っ感じですが、でも増子さんって北海道出身ですよね? どうですか? 地元の人から見れば「ちょっと違うんじゃない?」って思うところとか無いですか?

さく : むしろ増子さんは、北海道という地方から東京に出てきたという経験をされているので、それを愛媛に見立てて書いてくださったんだな、と私は思っています。私たちの気持ちになって…。「田舎魂、負けねぇぜ!」みたいな共通点があって、すごく共感できて、すんなり入ってきました。

―― なるほど。じゃあ、これは「伊予」ってタイトルは付いていますけど、そこに限らずもっと普遍的な想いを歌っている、と。

さく : そうですね。自分の地元に重ね合わせて。

―― 文体なんかも文語的な部分もあるじゃないですか。その辺の歌いにくさとか、解釈の難しさみたいなのってありましたか?

さく : 私はレコーディングの時期、連続テレビ小説の、今も放送中ですが、『とと姉ちゃん』を見てたんですけど、ちょっと昔の時代の話じゃないですか。「伊予魂乙女節」の歌詞や内容が、大地真央さんの演じる“青柳の女将”とすごい重なったんですね、自分の中で。言葉的にも歌詞と似てるところがあったりして、大地真央さんの雰囲気とか演技を参考にして歌った部分もあります。

ゆん : 私の場合は、さっきも言ったんですが、これまでの曲はメロディが複雑だったので、とりあえず歌うのが精一杯みたいなところがあったんですけど、今回はメロディは覚えやすいし、歌詞も泥臭くて渋い感じなので「勢いをつけてカッコよく歌わないとダメ」ってすごい言われたんですが、得意な方ではなかったので…。今回の曲はさくのBメロがすごい際立っているんですけど、他のメンバーはそこまで辿り着いていなくて。レコーディングの時も精一杯だったんですけど、ライヴで振りもついた状態で、そこからどう「泥臭く」、さらに「渋く」「勢いつけて」行けるかなぁ、って思っています。

さく : 歌い直しさせました(笑)。

ゆん : ああ、そうなんですよ~。1回録ったのをメンバーで確認して、「ゆんのソロパート気になるから歌い直して」って言われて、もう1回録り直しましたね。

―― 厳しいですね(笑)。

さく : でも、録り直した後に「どうだった?」って訊いたら、「あんまり変わらない」みたいなことを言ってて、「えぇ~?」みたいな感じの会話をしていました(笑)。でも、ぐっと良くなりましたよ。

―― で、歌詞には「清く正しく」とか「凛と佇む花のよに」といった言葉が並んでいますが、お二人はそうですか?

ゆん : まあ、う~ん、えっと(笑)。清く正しい?(笑)清く正しいです!(笑)

さく : (笑)はい。

ゆん : 今まではどちらかと言うと、楽曲ではあまり愛媛色を見せないようにしてきたんですね。「どこでも戦えるぞ」って言う意味で、いわゆる“地元ソング”的なものをあまり歌ってこなかったんですが、第2章のタイミングでこれを出すことによって、特別な意味を持つようになった気がしています。今まで愛媛に根付いてやってきて、いろんな面で地元にもバックアップしてもらったりと、いい環境でやってこられたけど、ここでさらにパワーを出す時が来たんだな、という風に。感謝の気持ちを抱きながら、「さらに強くなって戦ってくる」という意志を表した歌詞だと捉えています。サビの歌詞は特に「愛をもって感謝をもってさらに力強く」って感じで歌っていますね。

―― 「清く正しく」。でも歌詞には「男勝り」「女伊達ら」っていう部分もあります。お二人もそうですか?

さく : ありますね。今、振付師の南流石先生を師匠としているんですが、先生が言うには「ひめキュンには逞しさがある。それが他のアイドルと違うところだ」と。「フラフラしていなくて、ちゃんと地に足を着けてやってるところが違うし、そこが武器になる」と言ってくださって。私たちは自分たちなりに必死にやってきただけだけど、そういうところが自分たちの良さであり、強みになってるんだな、と思うようになりました。南さんにそう言われることで、歌詞に書かれていることも「あ、私たちのことなんじゃないかな」と気付きましたね。

―― MVも拝見しました。瀬戸内を感じたのですが、同時にもっと壮大なアイルランドのコーズウェイ海岸みたいな、そして、みなさんの衣装も『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな感じがしたんですが...。

さく : たしかに!『ロード・オブ・ザ・リング』みたい!あれは「和」テイストの、「和モダン」みたいな感じで、モードな雰囲気も取り入れつつ、“戦い”の要素も入れつつ。私たちもホントお気に入りの衣装です。

ゆん : すごいカッコいいです!

さく : 今までは社長が「この衣装ね」って決めることが多くて、衣装があって曲があって、これとこれ、っていう感じだったんですけど、今回は曲がまずあって、その曲に合わせてMVも作る、衣装も合わせる、みたいに、制作陣の意思統一のもとに作られている感が強いんですよね。「第2章」っていうのもあったと思うんですが…。衣装が曲とよりリンクしている感じがあったので、曲の世界へも入りやすかったです。

―― 「第2章」ということで、全国制覇へと向けて宣戦布告する!みたいな感じですね!

さく : そうですね。強気な感じで!

ゆん : メジャーデビューの時もMVで「全国制覇」って掲げてたんですよ!

さく : ああ、しよったね!

ゆん : 再び、って感じですね。

―― で、文語的な表現というか、普段使わない言葉なんかも歌詞に入ってますが、さくさんの場合、その辺はEテレの『俳句王国がゆく』に出演されているので、慣れたもんですよね!?

さく : アハハ!(笑)

ゆん : おぉ!余裕だっ!

さく : あの~、『俳句王国がゆく』では私、ただのアシスタントで、俳句を作る側ではないので。俳句自体もそんなに詳しいわけじゃないし…。でも、喋りのプロの方々に囲まれての仕事はとても刺激になりますし、『俳句王国がゆく』で学ぶことは、歌で表現することにおいても刺激になりますね。直接どうこうってわけではないんですけどね。

―― 言葉が洗練されて磨かれた、って書いておきます!

さく : あ、そうですね!

ゆん : アハハハ!(爆笑)

さく : でも、たしかに語彙は増えると思うので、言葉の解釈とか、歌詞の解釈とかはより深くできるようになっているかもしれません。

―― では、時間も少なくなってきたので、改めてこの新曲の聴きどころをお一人ずつ語っていただけますでしょうか。

ゆん : 「第2章」の第1弾シングルというのもありますし、怒髪天さんに曲を提供していただいたというのもありますし、振り付けが南流石先生っていうこともありますし...。もうホント、周りの力をたくさん借りながら、今までにないほどみんなの意思統一ができた作品となっています。逆に言えば「ひめキュンはそうしたすごい力を借りられるようになったんだ」と。ここまで自分たちが来れたから周りがこうやって手を貸してくれるようになったとも言えると思うので、そういう感謝の気持ちを忘れず、愛媛で培ってきた魂を胸に、ここからまた戦っていこうと思っています。MVでも「戦う」っていうのがテーマになっていますので、強く、勇ましく、凛とした女戦士のように、5人でこのシングルで力強く戦い、前進していきたいと思います。

さく : 今までの表題曲とは雰囲気も違うし、かなりイメージも違うので、以前からのお客さんとかは戸惑う部分もあるかもしれませんが、でも、これからのひめキュンには“魅せる”部分とか色んな武器を持ちたいっていうテーマもあるので、今までの「ひめキュン」は全然無くならないんですが、「さらにこんなこともできるよ」とか「挑戦していくよ」とか、そういう“未来”が感じられる曲になったと思います。そんな“これからの無限の可能性”を楽しんでもらいたいですね。「今回はこう来たな」「じゃあ次はどう来るんだろう?」って感じでワクワクしてもらえたらなと思います。

―― では、そろそろまとめに入らせていただきます。どうですか、現在の目標といいますと、やはり「ひめぎんホール」ですか?

ゆん : はい。まだメインホールは埋めていないので。

さく : 近い目標でいえば、ひめキュンはみんな、生バンド、バックバンドを従えてやるのが好きなので、近々ある怒髪天さんをバックに迎えたツアーを成功させたいですね。

―― え?怒髪天さんをバックに、ですか?

ゆん : そうなんですよ。増子さんが舞台に入るので、その間他の3人の方に「じゃあ、一緒にやりませんか?」ということで…やっていただくことになりました!

さく : そう、ツアー周るんですよ!

―― え~!すごいですね!

ゆん : まだ何も進んでないんですけど、ひめキュンのライヴを観ていただいて「曲が速いから不安だ」って言ってました(笑)。「あのドラム叩けるかな」って(笑)。

―― え?ツアーはいつ頃ですか?

ゆん : 11月ぐらい…? まだ詳細は決まっていないんですよ。

―― なるほど。でも楽しみですね~。

さく : はい。それも楽しみですし、ロックのフェスにもっと出たいですね。いわゆる「アイドル枠」とかではなく、バンドを従えて、他のバンドと同じ立ち位置で…。それこそ、年末のロッキンとかに出たいな、と。それに向かって頑張ります!

 

(取材・文:石川真男)

 

 

☆★ メンバー ★☆   ☆★ プロフィール ★☆
奥村 真友里(まゆりん)
河野 穂乃花(ほのたん)
岡本 真依(まいまい)
谷尾 桜子(さく)
菊原 結里亜(ゆん)
  2010年8月に誕生した愛媛発のご当地アイドルユニット。2011年3月に「恋愛エネルギー保存の法則」でCDデビュー。この曲はオリコンインディーズチャートで見事1位を獲得する。

2013年8月には満を持して『アンダンテ』でメジャーデビュー。2015年2月には、ゆるきゃら「バリィさん」とコラボユニット「バリキュン!!」としても活動し話題になった。同年8月27日28日には、5周年記念イベント「ひめキュン祭」をTSUTAYA O-EAST公演を敢行。また同年6月には、「NHKみんなのうた」を片岡鶴太郎×ひめキュンフルーツ缶名義でシングル「たこちう」を発売。ライブハウス松山サロンキティが運営ということもあり、ロックバンドやパンクバンドの対バンや夏フェス(ROCK IN JAPAN FES.、SUMMER SONIC、MONSTER baSH)にも多く出演している。

2016年1月には、地元松山市の「ひめぎんホール」サブホールを満杯にし、そこで「第2章」のスタートを宣言。2月にメジャー3rdアルバム『天国ギミック』をリリース。そして9月、怒髪天が書き下ろしたシングル「伊予魂乙女節」をリリースする。