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ピアニストの個性とレコーディングの特性のマッチングを聴く──藤田真央『passage』配信開始 2018.05.18
passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番
passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番
ピアニストの個性とレコーディングの特性のマッチングを聴く
藤田真央『passage』配信開始
2017年、世界的に権威のあるクララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝。
いま、ピアノ界の「ネクスト・ジェネレーション」のひとりとして注目されているピアニスト、藤田真央による待望のサード・アルバム『passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番』が、本日5月18日より先行配信開始となりました。
352.8kHz/24bit(DXD)のハイスペックによるオリジナル・レコーディングです。
 
藤田真央
■ピアニスト・藤田真央とは?
藤田真央は、2018年に20歳を迎える若手ピアニスト。
小学生の頃より数々の国内外のピアノコンクールで受賞を果たし、現役中学生時に、『ラフマニノフ 楽興の時 作品16/三善 晃 ピアノ・ソナタ他』、高校生時に『ワーグナー=リスト: 歌劇「タンホイザー」序曲』を録音。いずれもナクソス・ジャパンよりリリースされ、三善晃やプロコフィエフといった難度の高いプログラムを弾きこなす10代として話題になりました。

東京音楽大学付属高校で特別特待生として学び、国内外の若手演奏家向けコンクールを制しながらものびのびと成長を続けてきた彼が、一躍世界的な注目を集めたのは、2017年8月の、クララ・ハスキル国際ピアノコンクールでの優勝。
 

クララ・ハスキル国際ピアノコンクールセミファイナルでの演奏

「作品に自ずとあふれかえっている力を解き放ってゆくよう」「ただひたすらに天才的」(※)「音楽のある、恵みある場を、彼はひとりで作ってしまった」(※)といった絶賛の言葉とともに、世界的ピアニストとしての第一歩を大きく踏み出した藤田真央。

それらの言葉は、故・中村紘子氏が2016年に放った「藤田くんのラフマニノフの『(ピアノ)協奏曲第3番』に恋しちゃったわ。 あの演奏が心に絡みついてどうにも離れないし、夜も寝られない。」(「音楽の友」2017年3月号より)という賛辞に追随するものでもありました。

このたびリリースされたサード・アルバム『passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番』は、コンクールから約5ヶ月後の2018年1月に収録。
爆発的な成長を遂げた10代をまもなく終えようという藤田真央の、「いま」が結集したアルバムです。

藤田真央 3rd Album「passage」PV vol.2(4/14「題名のない音楽会」出演)

■ピアニストの個性とレコーディングの特性のマッチング
ピアニスト・藤田真央の特徴は、きわめてイノセントかつニュートラルに音に向かい合い、音をきれいに出すためにはどうしたらいいか、どういう表現が適切かということをひたむきに追求している点。
巧みな自己プロデュースによってキャリアを積んでいく最近の若手アーティストとはまた異なる、今後の新たな本道を示していくアーティストの登場ともいえるでしょう。
イノセントに音に向かい合うのが藤田真央の特徴

イノセントに音に向かい合うのが藤田真央の特徴

レコーディング風景(2018年1月29~31日(セッション録音)アクトシティ浜松 中ホール)

レコーディング風景(2018年1月29~31日(セッション録音)アクトシティ浜松 中ホール)

レコーディングのスタイルも、藤田の個性に合った形であることが求められます。
全部の音が目の前で鳴っているような押しの強い録音は避け、彼の演奏がかもし出す「空気感」を最大限に表現しなければなりません。

そこで選ばれた録音場所は、約1000席のキャパを持ち、音響の豊かさに定評のある「アクトシティ浜松 中ホール」。

共に藤田の才能を高く評価してきた、浜松市文化振興財団とヤマハアーティストサービス各位の協力を得て、ピアノ・ソロとしては最近では珍しい、贅沢な環境での録音が実現しました。

空間を大事にしたレコーディング・スタイルといえば、本作を手がけたレコーディング・エンジニア、深田晃氏の真骨頂でもあります。
『天上のオルガン』では2000席のキャパを持つ大ホール(ミューザ川崎シンフォニーホール)、『天使のハープ』では個人所有の風光明媚な小ホール(軽井沢コルネ)で、それぞれ会場の空間性を活かした録音を行ってきた深田氏。

今回のホールは、キャパとしてはその中間。大きすぎず小さすぎない、一台のピアノをたっぷりと包み込む空間を活かしつつ、藤田真央が大切にしている曲ごと、場面ごと、声部ごとの音色の変化や、微細な指先のコントロールによるハンマーの動きまで余すところなく再現するという、一見矛盾する録音コンセプトが見事に形になっています。
ささやくようなピアニシモから、低音域を連打するフォルティシモまで濁りなく表現するダイナミックレンジの広さは是非ハイレゾで聴いていただきたいポイント。そして藤田自身が語る「一音一音真珠のように美しい音が目に見えるよう」な感覚も、存分に味わえることでしょう。

使用楽器は、このホールに常設されているヤマハCFX。事前の打ち合わせを含めた調律師とのコミュニケーションで音作りを進めたといいます。
「高い音はきれいに出て、低い音には厚みがあり同時にふわっと抜くような表現もできて、和音を弾いたらがっちりとした音が鳴ってくれます。とくに録音1日目の終わり頃からとても良い響きになってきて、ホールに順応してきたのだろうと感じました。」(※)
と、ピアニスト本人も満足する、理想的な環境でのレコーディングとなりました。

 
■ハイレゾで『passage』を聴く~8つのポイント
前作2作と比べると、よりポピュラーな名曲を収録した今回の新譜『passage』。
藤田がいま取り組んでいる数々の作品のなかから、モーツァルトとショパンのピアノ・ソナタをメイン・プログラムとして採り上げ、さらに藤田自身がアンコールの定番としている、超絶技巧が炸裂する「トルコ行進曲(ヴォドロス編)」を最後に配した、1夜のコンサートのような構成となっています。


~『passage』収録楽曲~
リスト:19のハンガリー狂詩曲 S244/R106 – 第2番 嬰ハ短調
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18番 ニ長調 K. 576
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op. 58
シューマン=リスト: ミルテの花 Op. 25 – 第1曲 献呈
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)
ショパン:バラード第1番 ト短調 Op. 23
モーツァルト=ヴォロドス: トルコ行進曲(コンサート・パラフレーズ)

コンサートで客席の喝采に応える藤田真央(2018年2月21日・カワイ表参道)

コンサートで客席の喝采に応える藤田真央(2018年2月21日・カワイ表参道)


特に以下の箇所は、ハイレゾならではの臨場感を味わえるポイント。ぜひ、注意深く聴いてみてください。
トラック1 リスト:19のハンガリー狂詩曲 S244/R106 – 第2番 嬰ハ短調
9:13から始まるラフマニノフ版カデンツァ、特に9:30付近のフォルテから同じ音型での上昇進行の中、ふっと力が抜けて弱奏に移る部分などは、藤田真央の表現力とこの録音の立体感がよくわかるポイント。再生機器によってはまるで猫だましにでもあったような不思議な感覚を味わえるでしょう。
トラック2 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18番 ニ長調 K. 576 – 第1楽章
軽やかで優雅なモーツァルトをハイレゾで楽しむのは単純に心地よいものですが、特に冒頭部分、シンプルな主題を「強→弱」と繰り返す流れの中で、繊細なタッチの変化とホールの美しい残響の両方が分かりやすく再現されています。
トラック6 ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op. 58 – 第2楽章
冒頭、速いテンポで短い音の粒が絶え間なく上へ下へと散りばめられる様子。ひと粒ひと粒の色の違いがとてもカラフルに感じられるでしょう。
こうした短い音の連続するフレーズで、それぞれの粒立ちをしっかり描けることもハイレゾの大きな長所です。
トラック8 ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op. 58 – 第4楽章
0:11から始まる主題、それに続いて短く入れ替わるメロディーと、それぞれの伴奏部分でどのようにキャラクターを描き分けているか、こうしたところで藤田真央の真価が聴き取れるように思います。
トラック9 シューマン=リスト: ミルテの花 Op. 25 – 第1曲 献呈
シューマンが妻クララに捧げたとされる美しい歌曲が、リストらしいロマンティックさでピアノ作品に編曲されています。
リリカルな冒頭部分からドラマティックなエンディングまで、この録音ならではのダイナミクスを4分弱で味わうことができます。
トラック10 ショパン:ノクターン第20番(遺作)
映画「戦場のピアニスト」などであまりにも有名のこの曲ですが、是非「音色」と「間」に注目してお聴きください。
深くやわらかなベース音、1音ごとに様々なニュアンスを含んだメロディーの表現、聴く者の呼吸を読むかのような心地よいテンポの揺らぎ、それらすべてを包み込むホールの響きなど、何度でも繰り返し味わえることでしょう。
藤田真央はこの曲の最後の1音を、右手のひらを上に向けて人差し指の裏側でそっとタッチするように奏でています。
トラック11 ショパン:バラード第1番 ト短調 Op. 23
まるで交響詩のように様々なメロディーが行き交うこの曲。各主題のキャラクターをどのように弾き分けているか、その変化を追うだけでおよそ10分があっという間に過ぎていきます。
トラック12 モーツァルト=ヴォロドス: トルコ行進曲(コンサート・パラフレーズ)
問答無用の超絶技巧アンコール・ピースとしてピアニストに人気の曲ですが、実はレコーディング作品は編曲者ヴォロドスのもの以外ほとんど発売されていません。ハイレゾでしか再現できないスピード感とダイナミズムに溢れた3分間をお楽しみください。
 
これからますますの成長を遂げていくであろう若きピアニストの「いま現在」の音を、最大限に魅力的な形で録音した新譜『passage パッセージ - ショパン: ピアノ・ソナタ第3番』。
ぜひ、ピアニストの個性とレコーディングの特性が一致した録音の妙をお愉しみください。

・『passage』アルバム情報ページ : http://naxos.jp/news/maofujita_3rd
・藤田真央 プロフィール : http://naxos.jp/profile/maofujita
・藤田真央 今後のコンサート予定 : https://www.maofujita.com/concert/
・藤田真央インタビュー「ピアノ・ラウンジ(YAMAHA)」 : https://jp.yamaha.com/sp/products/musical-instruments/keyboards/pianist-lounge/interview/mao_fujita/p1/
Discography
ラフマニノフ: 楽興の時 Op.16/三善晃: ピアノ・ソナタ
ラフマニノフ: 楽興の時 Op.16/三善晃: ピアノ・ソナタ
藤田真央(ピアノ)
若きピアニスト藤田真央の演奏がついにアルバム・リリース。2009年の第19回日本音楽コンクール全国大会グランプリ受賞を皮切りに、 「世界クラシック2010」ジュニアの部第1位、2010年第64回全日本学生音楽コンクール小学校の部東京大会第1位、 全国大会第1位、などを独占。2012年8月には第13回エトリンゲン国際コンクール入賞を果たし(ドイツ)、 2013年8月、ウィーンで開催された第5回ロザリオ・マルチアーノ国際ピアノコンクールで栄えある第1位、併せてワーグナー・ヴェルディ賞を受賞。
古典派から近代ロシア音楽、さらには邦人作品まで、藤田真央の多彩なアプローチが聴ける鮮烈なデビュー・アルバム。
 
ワーグナー=リスト: 歌劇「タンホイザー」序曲
ワーグナー=リスト: 歌劇「タンホイザー」序曲
藤田真央(ピアノ)
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第6番、ラフマニノフ/楽興の時、そして三善晃のピアノ・ソナタという意欲的なプログラムでCDデビューした藤田真央。
その後に各地で開催された演奏会でも圧倒的な技巧と溢れる音楽性で聴衆を魅了した「タンホイザー序曲」、進境著しい自身の姿を投影したプロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番、クラシック・ファンにはなじみ深いベートーヴェンの「月光」を収録、常にアグレッシブな姿勢を崩さないヤング・ヴィルトゥオーゾ藤田真央のセカンド・アルバム!