groovers choice

Net Audio×groovers+ おすすめアルバムレビュー 第12弾! 2017.06.01

Various Artists

Hi-Res Icon 192kHz/24bit

話題の小説に登場するピアノ作品を集めたコンピレーション

直木賞と本屋大賞をW受賞したことで大きな話題を集めている恩田睦の小説、「蜂蜜と遠雷」。
ピアノコンクールに情熱をかける若きピアニストたちの白熱する人間描写で高い評価を得た小説だが、この作品に登場するピアノ作品19曲を集めたコンピレーションCD「蜂蜜と遠雷 作品集」が、ナクソス・ジャパンより発売となった。
すべてナクソスが所有する音源からのコンピレーションだが、これらの音源をeilex HD Remaster技術を用いてアップサンプリングし、192kHz/24bitのハイレゾ音源としてもリリースされている。eilex HD Remasterについては以前も取り上げたことがあるが、単純なアップサンプリングではなく、自然界の音の減衰をもとに、精緻なエンジニアリングを施して「意味のある」音声信号を補完することにポイントがある。今回の音源はさまざまな録音年、アーティストのものが集められているので、それをいったん一枚のCDとして統一感を持たせるためにリマスタリング。それにeilex HD Remasterを施すという二重の手間がかけられた作品となっている。
コンピレーションの前半はピアノソロ曲(コンクール予選曲)、後半はピアノ協奏曲(ファイナル演奏曲)が収録されている。ピアノソロ曲では、まさにひとつひとつの粒立ちの高さが光る。いずれもピアニストに非常に高い技巧が求められる楽曲のため、音数の多さは圧倒されるばかりだが、ハイレゾ化によってその音の細やかな表現力は、より高く感じられるようになっている。
特にハンガリー出身のピアニスト、イェネ・ヤンドーによる「バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番」は、音の柔らかさが素晴らしい。後半パートでは「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 第1楽章」が特にオススメ。録音クオリティに多少ばらつきはあるが、グッと前に押し出されてくるような録音、音場全体を捉えたような録音と、それぞれの捉え方の違いを聴き取るのも楽しい。おなじみの楽曲も多いので、小説と一緒にぜひ楽しんで欲しい。

 

 

 

渡辺 貞夫

Hi-Res Icon 192kHz/24bit

80年代の名ライヴを現代に蘇らせる

御年80歳を超えても、いまだ衰えぬパフォーマンスを見せてくれる渡辺貞夫の最新ライヴ音源が、ハイレゾでリリースになった。
この『アンコール!』は、1980年にナベサダが行なった武道館公演の楽曲を、改めて再演しようという試みで、会場は渋谷・オーチャードホール。80年にゲストで登場したピアニスト、デイヴ・グルーシンも参加している。今回はビッグ・バンドでの展開で、とにかく音の厚みに驚かされる。
音質的にもライヴとは思えないSNの良さで、曲間の拍手が入らなければライヴ録音ということを忘れてしまうほど。渡辺貞夫のサックスはブリブリとダイナミックに吹きまくり、一曲目からテンションはマックスに。6曲目の「シーイング・ユー」はゆったりしたバラード。
彼の音楽的表現力の豊かさ、楽器を思うままにコントロールするさまが目に見えるよう。
なによりメンバーが楽しみながら楽器を演奏しており、信頼しあったメンバーとの共演を、ナベサダ自身が何よりも楽しんでいることが伝わってくるアルバムだ。

 
 

BEVERLY

Hi-Res Icon 96kHz/24bit

ハイトーンヴォイスとドラムスの低音が聴きどころ

エイベックスからデビューしたばかりの新人女性ヴォーカリスト、BEVERLY(ビバリー)。アメリカとフィリピンのハーフで、2015年から日本にも活動を広げてきているという。
grooversではシングル2作品と、アルバム『AWESOME』がハイレゾリリースされている。
てっきり全編英語歌詞だろう、と思っていたら、日本語歌詞の楽曲も多く収録されていて驚いた。シングルにもなっている「I need your love」など、日本人の歌い手かと思ってしまうほど、無理のないアクセントと歌唱力の高さに驚かされる。
オーディオ的な聴きどころは、高域まで伸びる彼女のハイトーンヴォイスと、ズンズン体に響いてくるドラムスの低音。サウンドとしてはEDMがベースにノリよくキャッチーなメロディーが特徴で、フェスなどでの盛り上がりには最適だろう。
20代前半ということで、ヴォーカルの表現力にはポテンシャルを感じさせる。今後の活躍も楽しみだ。

 

 

 

トニー・アレン

Hi-Res Icon 192kHz/24bit

独自アレンジも加えつつオリジナルをリスペクト

偉大なるジャズ・ドラマー、アート・ブレイキーへのトリビュート作品として、ナイジェリア出身のトニー・アレンがアレンジしたアルバムとなっている。
収録曲は「Moanin'」「Night In Tunisia」「Politely」「The Drum Thunder Suite」といずれも劣らぬ名曲揃い。トニー・アレンは、アフロビートの創始者とされるフェラ・クティのもとで長く活動を続けてきた実力派のドラマー。
ジャズやトラディショナルが中心なのかと思いきや、ブラーのデーモン・アルバーンやレッチリのフリーとバンドを組んでアルバムをリリースしているなど、ロックとも相性が良い模様。今作はオリジナルに独自のアレンジを加えつつも、締めるところはきっちり締めるリスペクト溢れる内容。
ハイレゾで聴くと、トニーの軽やかなバチさばき、タッチが見えてきて面白い。録音のクオリティも高く、それぞれの楽器の位置がきちんと見えてくるのは聴いていて心地よい。

 
 

岸田繁 京都市交響楽団 広上淳一(指揮)

DSF Icon 5,644.8KHz

くるりのフロントマンが手がけた現代の交響曲

くるりのフロントマン、岸田繁が、交響曲の作曲に挑戦、しかもそれを初演したライヴ音源がDSD5.6MHzでリリースになっている。これはクラシック音楽の展開に高い関心を持っていた岸田に、京都市交響楽団が依頼して作曲されたもの(くるりは京都出身のバンドとしても有名)。
交響曲の壮大さもさることながら、同時に収録されている、くるりの楽曲のモチーフを織り交ぜた4楽章からなる「Quruliの主題による狂詩曲」が面白い。
岸田の類稀なるメロディセンスから生み出された楽曲が、多彩な楽器群が登場する交響曲で新たな息吹を手に入れる。さらにその初演のDSD録音ということで、まさに指揮者と演奏家たちの緊張感まで伝わってくるような、非常に鮮度の高いレコーディングになっている。
音源としても貴重なアーカイヴであるし、岸田は今後も京都市交響楽団と組んでの交響曲の作曲にも意欲を見せているようで、ハイレゾの新たな可能性として楽しみにしたい。

 

 

 
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