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寺下真理子が選ぶハイレゾ名盤5選 2017.02.15
ROMANCE   さまざまな愛のかたちを雄弁に語る楽曲たちをあなたに…。
  最新作『ROMANCE』
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AVE MARIA   国内外のハイレゾ・チャートで話題となったメジャーデビュー作。
  絶賛配信中 『AVE MARIA』 FLAC ページへ DSD ページへ

 

寺下真理子さん

「寺下真理子、AK70を愛用中」

「ハイレゾ・リスナーに選ばれたヴァイオリニスト」寺下真理子である。

2015年リリースのメジャーデビュー作『Ave Maria』が国内某ハイレゾ総合チャートで1位を獲得し、韓国grooversでも4位まで上昇するのみならず長期間に渡ってチャートイン。もちろん日本のgrooversでも売れてます!

そんな彼女だが、ハイレゾに親しむようになったのはまだ最近とのこと。自身の作品がハイレゾ・リスナーから絶大な支持を受けているのを知り、「ハイレゾとはなんぞや?」と思ったのがきっかけのようで。そして、iriver社のAstell&Kern「AK70」を入手してからはハイレゾにすっかり夢中となり…。

そこでgrooversは、そんな「ハイレゾ・リスナーに選ばれた」ヴァイオリニストに、「ハイレゾで聴くべき名盤5枚」を「選んで」いただき、その魅力を語っていただいた。そこでは、演奏家としての観点から音に対する様々な興味深い話も次々と飛び出し…。

待望の新作『ROMANCE』をリリースする彼女だが、新作については配信日(2月22日)に公開予定のインタヴューでたっぷりと語っていただくとして、まずはハイレゾ名盤5選を通して、寺下真理子のリスナーとしての、そして演奏家としての音に対するこだわりを感じ取っていただければと思います。お楽しみください。
 
 

 

 

Ravel   Ravel play カート
  Yuja Wang,Lionel Bringuier,Tonhalle-Orchester Zürich

 

――  最初の作品はユジャ・ワンのラヴェル。これはどんな理由で選ばれたんですか?

朝、ラヴェルのピアノ・コンチェルトを聞くのがすごく自分にマッチしていて。目が覚めるといいますか。朝起きたらこれをまず聞きたいですね。

――  とてもスピード感があって、アグレッシヴな曲ですが…。

アグレッシヴですね。それに明るいですよね。そして、ユジャ・ワンさんの魅力は彼女独特のリズム感というか歯切れの良さだと思うんですけど、それで目が覚めて、パワーが貰えるんですね。なので、すごく気に入ってます。

――  端正なタッチで弾かれる方ですが、同時に情感や情熱が溢れ出ていますよね。

そうですね。私と同年代ぐらいの方なので、そういう意味でも刺激を受けますね。個人的にはピアノが好きで、特にシューベルトのソナタが大好きなんです。ラドゥ・ルプーといった巨匠の演奏がすごく好きだったんですけど、最近はこういう若い方の演奏からも刺激を貰っていますね。ユジャ・ワンさんは同年代としても、そして同じアジア人としても凄く刺激を受けています。

――  寺下さんは既にアジアでも活躍されていますが、やはりアジア人演奏家の活躍は気になるところですか?

そうですね。とても関心があります。自分も台湾では演奏したことがあるんですが、今後は韓国にも行けたらいいなと思います。自分の音楽によって国境を越えて何かをシェアできたら、という想いは強くあるので。一昨年の台湾でのコンサートにはたくさんの方が来てくださって、とてもうれしくて。言葉は通じないんですが、自分の音楽を通して幸せな気持ちを共有するという経験をして、とても感動したのを憶えています。

――  ピアノがお好きとおっしゃいましたけど、ヴァイオリニストとして聴くピアノ演奏というのはどうですか? どういう点を吸収しているというか、どういうところにインスパイアされるというか…。

ヴァイオリンは旋律楽器なので大抵は共演者が必要じゃないですか。ピアニストとかオーケストラとか。それに対して、ピアノって一つで完結できるじゃないですか。完全な世界を作れるというか。素晴らしいピアニストというのは、曲を全て把握しているんですね。それはヴァイオリニストからすればすごいと思うところなんです。もちろん私たちも演奏している時には共演者の音も聴くんですけど、実際にそれら全ての音を“弾く”となると違うのかなと思います。なので、ピアノ曲はソロ曲が好きですね。ベートーヴェンとかシューベルトとか。特に私はシューベルトのピアノ曲が好きですね。

――  ところで、ユジャ・ワンさんをハイレゾで聴いてみていかがですか?

とにかく気迫が伝わってくるし、臨場感というんですか? オーケストラの息づかいが聞こえてくるというか迫ってくるような感じがあって、聴きながらいつもびっくりしています。コンサートを聴きに行っているような、その空間で聴いているような…。CDで聞いているとどうしても何か一枚ベールがあるような感じがするんですけど、そこを突破して迫ってくるような感じがありますね。

――  やはり一番感じるのは、臨場感があって一つ一つの音の粒立ちがいいということですよね。ポップスやジャズの場合だと音の分離が良くて、定位がはっきりわかる、っていう点が特徴ですが、クラシックの場合、例えばオーケストラだと全体的に包まれるような印象で、独奏などではより一つ一つの音の表情がくっきりと出る、という感じですよね。

そうですね。表情もすごく聴こえますね。それに、オーケストラのレンジっていうんでしょうか? 一気に広がる感じはありますね。倍音なんかもよく聴こえるなと思いました。

――  そうですね。僕もどういう言葉で表現したらいいのかいつも考えてるんですけど、一つ一つの音の間隔が広くて、それそれが大きく鳴っている感があるなというか…。有り体に言えば「ふくよか」というか、そういう感じがありますよね。

そうですね。だから耳当たりがいいんだと思います。ハイレゾだと、ふくよかで豊かな音に聴こえますね。

――  デジタル楽器の音だったら、音を鳴らした位置からまさに音がスタートするという感じですが、アナログ楽器だと、特にヴァイオリンだとそうなのかもしれないですけど、それまでの立ち上がりの音というのが空気としてすごく伝わる感はありますよね。

それはありますね。だからより“弓のしなり”っていうか、表情がよく聴こえますよね。

――  ヴァイオリニストからすると、それはいいことですか?

そうですね。呼吸であったりとか自分の伝えたい情感がそのまま反映されるという意味では、より心に伝わる音になると思います。

――  でも、ある意味いろんなところが見えすぎちゃうという点もあると思うんですが…。

それもあるかもしれないですけど、皆さんいろいろ気をつけて演奏されていると思うので、デメリットよりメリットの方が大きいと思います。深みがあったり伸びがあったり倍音があったりすると感動がより大きくなりますよね。

――  ハイレゾは、そうした空気感を細密にデジタル信号化して精密にアナログへと再変換して再生するという技術なんですが、そういう意味では、もともとの原音には倍音など不可聴域の音が含まれていて、ハイレゾはそれをどこまで忠実に再現できるか、というものなんですよね。それが「ふくよかさ」とか「空気感」を生むと思うんですが、演奏家としてはそこまで細かく伝わって欲しい、と。

そうですね。演奏家は不可聴域の音なであっても感じているんですよね。それを追求していくのが音楽家ですので。私は音の響きを“飛ばす”イメージを持っているのですが、そういう感覚も捉えながら演奏してるんですよね。音の向きとか、「こっちじゃなくてこっちへ」といった感じで。そういう細かい部分も訓練してるんですよ。

――  「飛ばす」というのは面白い表現ですよね。

クラシックってマイクを使わないじゃないですか。ホールが2000人のキャパとかだと少し大変ですよね。音響もホールによって違いますし。それに同じ大きさの音を出していても、どういう風に音の放射線を描いていくのかによって全然違うんですよね。そういったちょっとした意識で演奏の出来も変わりますし、聴衆の抱く印象も変わると思います。

――  例えば、遠くに飛ばすためには具体的にはどうしてるんですか?

音の捉え方を変えるんです。自分の中では、音は放射線を描くように飛んでいるイメージなんですが、必ず上に投げる、遠くに着地するようなイメージを描いて演奏しています。どこまで音を聴いているか、鳴り終わりまで聴いているか、が大事だと思います。すごくマニアックな話なんですけど、放射線を描くように響きを作って、それが着地するまで聴き届けるというか…。

――  面白いですね。音って空気の振動ですからドラムとかパーカッションとかは音が直線的に飛んでいくイメージですが、ヴァイオリンみたいに柔らかく鳴るものは空気に乗って運ばれるイメージです。

そうなんです。だから空気に乗せるというイメージだと思うんですけど、あとは音の聴き方でも確実に変わっていると思います。

――  たぶん、意識はされていなくてもリスナーの方ってなんとなく肌で感じたりしてるんじゃないかと思いますし、ハイレゾを聴いて耳が肥えて来れば、そういうことに対しても感覚が研ぎ澄まされていくかもしれないですね。

 

 

ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン協奏曲第1番、グラズノフ: ヴァイオリン協奏曲   ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン協奏曲第1番、グラズノフ: ヴァイオリン協奏曲 play カート
  ニコラ・ベネデッティ,ボーンマス交響楽団,キリル・カラビッツ

 

――  ニコラ・ベネデッティですが、これを選んだのはどうしてでしょう?

最近は近現代の作曲家、とりわけロシアの作曲家にハマっていて。今はプロコフィエフの2番のソナタを勉強していたりとか、最新アルバムにもストラヴィンスキーを入れたんですけど、その延長でショスタコーヴィチのコンチェルトを近々弾きたいなというのがあって選びました。ニコラ・ベネデッティさんって素晴らしいヴァイオリニストじゃないですか。ものすごく可愛いし。そういう点で憧れもあるし、もちろん演奏もすごく好きで。ニコラさんの大ファンなんです。

――  ロシアものに惹かれるというのは何か理由が?

近現代もの、特にロシアものって、時代の状況によってはプロパガンダ的にならざるを得なかったんですよね。ショスタコーヴィチなんてまさにそうで。例えば交響曲や室内楽曲などの中には、時に政府にとって好ましくないようなものがありました。逆にプロパガンダに利用されたものもあったり。ショスタコーヴィチのヴァイオリン・コンチェルトは、スターリン死後の“雪解け”の中、ジダーノフ批判が和らいだ時期に発表した作品なので、プロパガンダ的なものとは大きく違っています。一人の作曲家の中にもすごい変化があるというか…。自分の人生も、去年はいろいろとあって、ちょっと落ち込んだ年だったんです。で、「自分が変わりたい」と思った時に、ロシアの作曲家と自分の感覚がものすごくフィットしたんです。やはり、怒濤の変革の時代の作曲家なので。芸術家が自由になれない時代の表現というものにすごく惹かれたというか…。政治に翻弄された作曲家の葛藤もあるし。それを抱えながらプロパガンダ的な作品を作っていた時と、それから自由になった時の作品というのは全然違って聞こえるわけですよね。それで、私も「変わりたい」「自分の人生の中で変革を起こしたい」と思った時に彼らの作品とすごく波長が合っちゃったんです。おそらくそれで今ロシアものにハマっているのではないかな?と思います。

――  僕も一時期ロシアものにものすごくハマったことがあって。音楽だけじゃなく文学や映画も含めてなんですが。その時、例の「ショスタコーヴィチの証言」を読んだんですよね。偽書だとも言われているものですが、面白い、というか読んだ当時はよくわからなかった部分もあるんですが…。時代順に書いてある訳ではなく、思うことを書き連ねているという感じです。まあ、インタビュー証言をまとめたと言われているもので、話が突然前後したりして、支離滅裂なところもあるんですけど、興味深い話がいろいろと書かれてあって。例の交響曲第五番も、社会主義リアリズムに充ちたプロパガンダ作品と捉えられていますが、“二枚舌”という感じで反政府的なメッセージが潜んでいるものだ、とも書かれていて…。

それは絶対にあると思います。政治に対する反発、反抗心は絶対にありますよね。ショスタコーヴィチの作品は、時代によっては聴くのがしんどいものがあるというか…。暗いし怖いし…。ですけど、自分も大人になりそれなりの経験をしたら、すごく共感できるようになったんですね。すごい時代に生きた人なんだろうなということが想像できるようになって。苦しみもあったと思うし、人間らしい葛藤みたいなものもすごく感じるんですが、それにも共感できますし。それに、ロシア音楽、特に近現代のものは、それを超えていこうという力も感じるんです。時代や体制に押し潰されるのではなく、それを打破して前に進もうとする力があるので、自分にも葛藤があったけど、それを超えていこうというパワーになったというか…。とにかく今の自分にマッチしていますね。すごく好きです。

――  僕も人に薦める時によく言うんですけど、たとえば、パンク・ロックってあるじゃないですか。最近のパンク・ロックは“ファッション”的な要素の強いものも多くて、言葉では過激なことを歌って激しい音を鳴らしますけど、実際は平和で安全な世界に生きている。それよりも、例えばショスタコーヴィチなんて命がけで音楽を作っているわけですから、よほど“パンク”ですよね。下手すると“粛清”という名の下に殺されちゃうわけですから。

本当にそうですよね。そんな中で命を賭けて表現していた人ですからやっぱり鬼気迫るものはありますよね。

――  ですよね。自己の表現欲求に基づいて、当時のソ連が言う「形式主義的な」、つまりアヴァンギャルドな作品を発表して、プラウダ批判とかジダーノフ批判を受けるんですが、その直後には一見政府の意向に沿ったプロパガンダ的な作品を発表しますけど、実はその中にも反政府的なメッセージや全体主義とは反する自己表現を込めていたりして…。

そこが素晴らしいところですよね。

――  この協奏曲もしばらく寝かしてたんですよね。スターリンが亡くなって、雪解けになってから発表したという。

そうですね。すごく解放感を感じるんですよね。だからすごく好きです。

――  かつては「社会主義リアリズムの色濃いプロパガンダ作曲家」と捉えられていて、暗くて重いイメージがありましたけど、いろんな作品を聴いてみると、美しい旋律の作品があったり、ジャズに影響を受けていたものがあったり、映画音楽的なものがあったりとか、多彩ですよね。

なんかいろいろな電波を張っていた方なんだろうなと思いますね。やっぱりすごい作曲家だと思います。

 

 

Come Away With Me   Come Away With Me play カート
  Norah Jones

 

――  続いてノラ・ジョーンズです。クラシックばかり聞いているわけではないんですね。

ではないですね。ノラ・ジョーンズはすごくリラックスできるので、この『Come Away With Me』はめちゃくちゃ聴いてます。例えば、飛行機でリラックスしづらい時とか、緊張する状況の時とか、寝る前とか…。とにかくよく聴いていますね。

――  ずっとCDで聴かれてたんですね。

そうですね。CDで聴きましたし、iPodにも落としました。コンサートも行きましたね。

――  で、今はハイレゾで聴かれてる、と。

はい。彼女の場合はソフトな感じがさらに強調されて、より心に深く入るという感じですね。なので、変わらず好きですけど、ハイレゾだと、さらにソフトに、さらに柔らかく聞こえるので、よりリラックスできますね。

――  ジャズなどのオーガニックなバンド・サウンドをハイレゾで聴くと、本当にそのバンドに囲まれているみたいな、その紡ぎ出す空気に包まれるような感じがするんですけど、ノラ・ジョーンズの紡ぎ出す空気感はまた独特ですよね。

独特ですよね~。彼女は間の取り方とか呼吸の取り方とかが独特だと思うんですけど、そういう部分がはっきりと聞こえてくるとちょっとゾクゾクしますね。

――  ジャズを基調にしながらもちょっとカントリーっぽいと言うか、イナたい感じもあります。聴いていてとても落ち着きますよね。

落ち着きますよね。リラックスできる。あの人の声から何か出てるんですかね、アルファー波みたいなのが(笑)。

――  あるかもしれないですよね。例えば、ノラ・ジョーンズを聴くことで、ご自身の演奏に何か影響ってありますか?

う~ん、それはあまり結びつけてないんですけど…。クラシックの曲を聴くと頭が「分析モード」になるんですね。「この人はこういう歌い方をしてるな」とか「こういう間の取り方をしているな」とか。でも、それ以外のジャンルでは一切考えないようにしています。じゃないとリラックスできないので。ポップスとかジャズを聴く時はスイッチを切りますね。クラシックはどうしてもスイッチが入っちゃうので“聴いちゃう”んですけどね。他のジャンルの時は、そういうのは考えないようにしてます。

 

 

Utada Hikaru Single Collection Vol.1(2014 Remastered)   Utada Hikaru Single Collection Vol.1(2014 Remastered) play カート
  宇多田ヒカル

 

――  次に、宇多田ヒカルです。

「Automatic」で出てきた頃はめちゃくちゃ聴きましたし、カラオケでもすごく歌ってました(笑)。私、ポップスとかに疎かったんですよ。クラシックをやっていたというのもあって、あまり聴く機会もないし、テレビを見る時間もなくて…。それでも宇多田さんのこのCDに入っている曲はほとんど知っていて…。ポップスのCDでこれだけ聴いたのは、このベスト盤が唯一と言っていいぐらい。なので思い出のアルバムですね。

――  ハイレゾで聴くと声がいっそう味わい深く聴こえますよね。

そうなんですよね。全体的にふくよかに聞こえますし、声も柔らかく聴こえる印象がありますね。

――  自然の音にはいびつな形もあったりすると思うんですが、ハイレゾではそういうものがより細密に再現されていて、ふくよかさを感じるんだと思います。

リアルに再現されているんでしょうね。だから心によりすっと入ってくるというか。好きですね。やはり音に敏感なので、シャープな音が少し苦手なんです。もともとヴァイオリンってシャープになりがちなので、普段の演奏から深い音を出すように気をつけていますね。なので、自分の音は「太いね」「丸いね」って言ってもらえる事が多いのですが、そこはすごく意識して出しています。シャープに引っかけないというか、必ず「音を丸く作っていく」ように気をつけています。

――  その「丸く出す」ために工夫していることはありますか?

それはいっぱいあります。体の使い方から呼吸から全部関係してきますね。歌でもそうだと思うんですけど、口先だけだとふくよかさが出せないですよね。お腹から出せば倍音も出るし、豊かになると。それと同じように、より根元から出すように、と意識していますね。

 

 

Purpose(Deluxe)   Purpose(Deluxe) play カート
  ジャスティン・ビーバー

 

――  最後の一枚は、ジャスティンビーバー。こうした割と最新ヒットものもお聴きになってるんですね。

すごく詳しいわけではないんですけど…。確かに先ほどは「他ジャンルのものを自分の演奏に関連づけては見ていない」とは言いましたが、こうしたアメリカの歌手のリズム感とか、天性の感覚、「音楽に乗れちゃってる」感というのは憧れますね。

――  リズムの乗り方がクラシックとはまたちょっと違う、と。

そうですね。あと、最近ではブルーノマーズを見て、何と言うリズム感の持ち主だろう!と思ったり。「何だろうこの人」って(笑)。私たち日本人のリズム感と違うのかもしれないですね。そういう意味でも「なにか違うな」「すごいな」と思って見ています。

――  面白いですね。

なので、そういうのは見ちゃいますね。アリアナ・グランデとか。私たちには求められないけど、本物の音楽ができる人には反応しちゃいますね。どんなジャンルでも。

――  ジャスティンビーバーなどはEDMにカテゴライズされるわけですが…

EDMって何ですか???

――  「エレクトロニック・ダンス・ミュージック」というものです。少し前から流行っていて、今やジャンルとして確立してますね。

そういえばピコピコという音が鳴ってますもんね(笑)。

――  このアルバムは、そういう"ピコピコ"の中でも比較的ピコピコを排除したもので、"トロピカルハウス"と呼ばれるサブジャンルに分類されるんですけど、中南米由来のリズムを少し取り入れてるんですね。まあ、あんまり本格的なものではないですけどね。僕はかつて南米の音楽を専門としていて、ブラジルにしばらくいたこともあったんですが、その人たちのリズム感というのは、まあ、ものすごいですよ。

そうですよね、南米とか半端ではないですよね。ダンスの文化がある、タンゴとかもそうですし、ブラジルだったらサンバとか。

――  そうですね。それ以外にもたくさんリズムの種類があるんですよ。

そういったDNAに入り込んでいるリズム感には敵わないですね。

――  そうですよね。ポリリズムというのが体の中に入っているので、あまりポリリズムと意識せずにやっているというか…。

ですよね。日本ってやっぱり”すり足文化"なんで、そもそもリズムが"無い"んですよ。で、農耕民族だから"アップ"にはなかなかいかないんですよね。全部ダウンにいっちゃう。なので、私は相当訓練しました。西洋音楽って全部"上向き"なので、例えば、西洋の噴水も上向きですよね。日本って日本庭園に行けば鹿威し(ししおどし)があるじゃないですか。つまり水が下に向かって流れますよね。でも、西洋って必ず上に打ち上げるんですよ。中国はまた違うんです。騎馬民族だから、わりとリズム感がアップなんですよ。農耕民族の日本や韓国は全部下に降りちゃう。気をつけないと表現がべったりしちゃうんですよね。だから西洋の人たちのリズム感には結構憧れてます。

――  すごい研究されてますね。

でも、よく言われる論議なので、音楽家の間では有名な話なんです。

――  面白いですね~。そういう探究心をもってジャスティンビーバーを聴いている、と。

そうですね。天才だな、うらやましいな、と思いながら客観的に捉えてますね。

 

 

【ニュー・アルバム『ROMANCE』について】

 

――  では最後に、2月22日に発売される新作『ROMANCE』についてひと言お聞かせください。

私が“恋した”曲たちを収録した作品です。全部好きな曲なんですけど、「恋や愛をテーマにした曲」という基準で選曲しました。例えば、シューマンのロマンスだったらクララ・シューマンに捧げた曲なので、妻への愛を歌った曲ですし、映画『ひまわり』のテーマ曲についても、あの映画は悲しい映画なんですが愛の形を表現した名作だと思うんですよね。
そういった、自分が好きな作品、自分の中で思い入れのある愛の形を描いた作品、もしくは作曲家が愛をテーマで書いた作品を集めました。そういう意味でも、統一感のある一つのテーマに沿って収録されていますね。
映画音楽など耳馴染みの良い曲もあれば、本格的なクラシックの曲もあり、という風にバランスよく選曲しているので、クラシックがお好きな方にも聴いていただきたいですし、普段あまりクラシックを聴かない方、まだ聴いたことがないけど聴いてみたい方にも手にとっていただければ嬉しいです。

 

(取材・文:石川真男)

 

 

寺下真理子さん

寺下真理子 Mariko Terashita

 

5歳よりヴァイオリンを始める。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校、
同大学、ブリュッセル王立音楽院修士課程卒業。

1993年、第1回五嶋みどりレクチャーコンサートに出演。
1996年、第50回全日本学生音楽コンクール中学生の部、大阪大会第2位受賞。
1997年、第2回宮崎国際音楽祭にて、故アイザック・スターン氏の公開レッスンを受講。
五嶋みどりデビュー20周年記念コンサート(大阪NHKホール)にて五嶋みどりと共演。
2004年には第2回東京音楽コンクール弦楽器部門第2位(ヴァイオリン最高位)受賞し注目を集めた。これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団 などと共演。
2014年、大桑文化奨励賞を受賞。
2015年11月6日には初の台湾公演を行い大成功を収めた。
2015年2月4日「Ave Maria」(KING RECORDS)をリリースし、高音質ハイレゾ音源配信サイトにて全ジャンルの中から週間1位を獲得。Yahooニュースにも掲載された。
韓国の大手ハイレゾ音源配信サイト"groovers"にて、4位にランクイン。その後も長期間に渡りTOP50にランクインした。
2017年2月22日に2枚目のアルバム「ROMANCE」(KING RECORDS)をリリース。
同年4月から全国5都市にて、「ハウス食品グループ ファミリーコンサート」のソリストとして、東京フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、九州交響楽団と共演予定。

各地での様々なコンサート・リサイタル・公演の他、テレビ・ラジオなどにも積極的に出演。
現在、(株)オスカープロモーション に所属。

http://mariko-terashita.com